今後出版予定の岡本一抱/著・木田一歩/整理『現代版素問諺解 総論篇』の中から、上古天真論、靈蘭祕典論について一部抜粋してご紹介いたします。
General content
(2p) 1:上古天眞論
(5p) 2:四氣調神大論
(8p) 3:生氣通天論
(13p) 4:金匱眞言論
(18p) 5:陰陽應象大論
(28p) 6:陰陽離合論
(32p) 7:陰陽別論
(38p) 8:靈蘭祕典論
(40p) 9:六節藏象論
(49p) 10:五藏生成論
(55p) 11:五藏別論
(57p) 12:異法方宜論
(59p) 13:移精變氣論
(62p) 14:湯液醪醴論
(65p) 15:玉版論要
(68p) 16:診要經終論
(73p) 17:脉要精微論
(84p) 18:平人氣象論
(92p) 19:玉機眞藏論
(102p) 20:三部九候論
(108p) 21:經脉別論
(112p) 22:藏氣法時論
(118p) 23:宣明五氣篇
(121p) 24:血氣形志篇
(123p) 25:寳命全形論
(127p) 26:八正神明論
(132p) 27:離合眞邪論
(136p) 28:通評虚實論
(143p) 29:太陰陽明論
(145p) 30:陽明脉解篇
(148p) Reference book
(150p) Omake
上古天真論
昔、黄帝がおられた。神として生まれ、生まれてすぐ物を言い、幼くして頭がよく回り、成長してからは人情が厚い人物となり、指導者(天=人の上)であった人物である。
黄帝
上古の人々はが百歳まで生きても動作は衰えないと聞いたことがある。しかし今頃の人はその半分の五十年で動作、ふるまいが衰えてしまう。これは時世が異なっているのか、それとも人生の道を違えたのだろうか。
岐伯
上古の人々とは、道(=天地の道)を知る者を指し、道を知るとは、陰陽の法にのっとり生を保つ倫理を知って調和をはかり、飲食に節度を持ち、危うい行動をせず、無理な労働で身体を壊すことがないということである。故に天寿を全うする時は、百歳ぐらいで形と神が共に老いて死んでいくのである。しかし今頃の人はこういうことではなく、日々酒を浴びるように飲み、酔って房に入り、精が尽きるまで欲するので、原真の気は消耗して満つる時がなく、神が常に正しく働くことができない。よっていつも快い状態であるべき心が、生楽(本来の生き方)に逆に動き、しかも行いに節度がない為に、半分の五十歳で衰えてしまうのである。
以下上古の聖人の教えを述べていく。
聖人は身体が虚して邪が入り込むのを避けることができる。更に私欲がなく真気がこれに従っている。そして精神が常に内から守っているので、決して病が入ることはない。いつも心が静かで穏かにし、欲が少ないので何も恐れることはない。また労働を怠けようとしないので、気が経絡流注に沿って流れ、多くのモノを欲しがらないので天寿が叶えられるのである。その聖人は濃い味のモノを食べず、高価なものを求めず、疑う心を持たず、年齢の上下に関係なく慕われている。その人を“朴”と言い、欲によって目を疲れさせることがなく、邪な心に惑わされることがない。ただその行状が法にかなっている人は、敢えて道に沿って生きようと思わなくても生きることできる為に、百歳を生きても動作が衰えることはなく、徳を全うして生き方に危なげがないのである。
黄帝
人が老いて子が出来ないのは力が尽きた為であろうか。また天命が定めた数とはいかなるものであろうか。
岐伯
女子は七歳で腎気(水の気)が盛んになるので、歯が生え変わって髪が伸び、女の子らしくなる。
- 十四歳で天癸が至って任脈が通じ、太衝脈が盛んになって、時がくれば生理が始まり、子供を作ることが出来るようになる。
- 二十一歳で腎気が身体に行き渡り、永久歯が丈夫になる。
- 二十八歳で筋肉は硬く締まって髪が長くなり、身体の盛りを迎える。
- 三十五歳で陽明脈が衰えて顔面が黒ずみ、髪が抜け始める。
- 四十二歳で三陽の脈が上方で衰えて顔面はくすみ、白髪になります。
- 四十九歳で任脈が虚して太衝脈も衰え、天癸は枯れて生理が止まり、ついには形(陰)が徐々に衰えて、子を作ることが出来なくなるのである。
8:靈蘭祕典論
黄帝
十二臓の役割、位はどのようなものか。
岐伯
心は君主の官。神明の出るところ。
肺は相傅の官。治節が出るところ。
肝は将軍の官。謀慮が出るところ。
胆は中正の官。決断が出るところ。
膻中(心包)は臣使の官。喜楽が出るところ。
脾は倉廩の官。五味が出るところ。
大腸は伝道の官。変化したモノが出るところ。
小腸は受盛の官。化物したモノが出るところ。
腎は作強の官。技巧が出るところ。
三焦は決瀆の官。水が通るところ。
膀胱は州都の官。津液が蔵されて気化され、再利用されたり排尿されたりする。
凡そ十二官は互いに関連してどれが失われても成り立たない。故に心の君命が適切であれば心以外の十二家臣は安定し、養生により天寿を全うして危なげなく生きることが出来、健康で無病になるが、しかし逆に君命が明確でなければ、十二官皆危うく道は塞がれ通じなくなり、形が大きく害われ生命に関わる災いとなるので、日頃の養生が大変大事である。
これは天下でも同様で平生を疎かにすれば危うい方向へと政局が向かう。気を付けよ!気を付けよ!
“至道”は大変に微で捉えようもなく変化するが、その道の偉大さに対し凡人があれこれと探してもその重要性はわからないが、一体誰がどのようにして知ることができるのだろうか。それは誰が知るモノではなく、つとめて明確にしようとしても、誰も明確に知る事が出来ない。
しかし道というものが、全くつかみ所のないものであっても、極めて微細な所から何か芽生えを見出して知りうる事もあり、そして発見された微細なモノを千倍にも万倍にも拡大して類推すれば、道というものが自然と分かる。人の身体もこれと同じで、一部から類推し拡大すれば明確に把握することが出来るのである。
黄帝
ああ、実に良い話であった。詳細な道理は大聖人の業績のような偉大な道理である。
この偉大な道理を広く周囲の者に行き渡らせるため、心身を清め吉日を選んで教えを受ける事にした。そして黄帝は吉日良兆の日を選び、官中の書庫霊蘭の間に保管し伝承することにした。