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『愚解経脈論』木田一歩/著

2015年3月に静風社より出版の木田鍼灸院院長 木田一歩/著書『愚解経脈論』の中から、血、水からのApproachについて一部抜粋してご紹介いたします。

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目次

  1. いざない
  2. The first chapter 経脈論・基礎門
  3. The second chapter 経脈論・十二経流注門
  4. The third chapter 経脈論・十二経脈門
  5. The forth chapter 経脈論・奇経門
  6. The fifth chapter 経脈論・病症門
  7. The sixth chapter 経穴論・基礎要穴門
  8. The seventh chapter 経穴論・生理類門
  9. The eighth chapter 経穴論・解剖類門
  10. The ninth chapter 経穴論・名称類門
  11. Reference book
  12. つずきに

一部抜粋

・・・次に身体の立体構造から考える。経絡はその役割が異なるゆえに経脈と絡脈に分け、それぞれ別に異なる名前を付けている(詳細は後述)。そして身体表面には表裏を連絡する等の役割を持った点(経穴)が生理により整然と配置されている。この表面とは身体を覆う身体内と外を隔てる“膜”を指し、裏とはその膜の内側全部を指す。つまり体表膜に存在する点は系統や役割等によって区切られ、気の強弱によって反応の現われ方を異にする。即ち経絡を構成する気の勢いのある経絡を認識することは容易であるが、反対の場合は経脈の存在を明確に認めることも、迅速にその目的を担うこともできず、極に達した場合は死に到るのである。そう経絡は生きている間のみ存在するモノである。

更に古典の「表の膜に存在する点は属する臓腑につながる」について愚考すると、この体表膜の点は現在の検査器具で詳細に探しても実在を見つけることはできないが、しかしこの点が属する臓腑や器官はX線等で実在を確認することが可能である。これは体表膜を基点にすると、形を為さないモノから到達する臓腑へ走行するに従い、実在の形を為すモノへと変わっていく構造を為している。つまり無形から有形に、或いは有形から無形に移行していく過程が経脈・絡脈・孫絡脈である。これを太陽光により育つ植物を例にすると、形を為さない太陽の光が植物の葉幹花の表面を照射することで内に浸透し、やがて“植物の実”へと変わる『有形無形論の法則』と同じ論理で展開されている。「体表には陽気が多く裏には陰気が多い」とで述べられているのは、古人がこの視点から見ての発言であろう。

経絡は水中に浮いている。 水は電気を通す媒体になる。

Ⅲ. 血、水からのApproach

 経脈と血管は字句の比較からも明確であるが、根本的には脈と管の形態の違いがある。が制約を受けないモノの流れ、が制約を受けるモノの流れである。すなわち経脈は流すモノが質量や形を有さない無形の気である、赤血球や白血球等の働きために制限を加えることは出来ないが、血管に実際に流れているモノは質量や形態を有す陰血の構成物であるヘモグロビンや鉄であるから、これらを管理することが必要であり且つ可能である。古典には「孫絡は身体を縦横にネットする。」と述べているが、これは「血中の陰気は毛細血管で、血中の陽気は孫絡で身体を縦横にネットする」と愚解できる。

 人体は7割を超える水で構成されているが、本来水は形而上学的には自らの意思を持たないため、加温を行なわない限り冷たく温度を有すことはない。つまり生きるという明確な意識を持たない死の状態にある人間は、体温を作るという意思を持たないために冷たいのである。換言すれば生きるという意識を持つ人間は体温を有す暖かい状態にある。この絶対的な生死の論理に対して経絡は、体温である「生命の火」を分配するという働きで関与している。生体の陰陽が交流して正常に生命活動が営まれるためには、生体内の水温はいかなる場合であっても常に一定に保たれていまければならない。その生命維持の環境を維持していく作用が経絡である。

左循環になる。整理すると

体環流は背面を北、正面を南、右を西、左を東、にして方位が決定されたが、

腹還流は下腹部を北、上腹部を南、右を西、左を東に方位を決定する。この理を張景岳は『類経図翼・奎壁角軫天地之門戸説』で「春分二月中、日躔壁初、以次而南、三月入奎娄、・・」と『五運行大論・五気経天化五運図』の解説をしているように腹還流は左循環を持って正とする

左右の矛盾

以上のように『陰陽離合論』と『五運行大論』を根拠にして体還流と腹還流のベクトルを決定すると左右に矛盾が生じるが、この問題点は腹部本来の方向性で説明できる。消化管は口から肛門までのベクトルは上方から下方を向いているが、この方向を基本として健康状態では医師は病人と対することがないので頭部方向から下肢の方向に向かって、病人と医師は同側の右手は右方、左手は左方になる。しかし腹部を中心にする見なければならない場合は病という特殊な状況なので、通常とは異なる医師と病人が対する基本方向とは逆の、病人の右手は左方、左手は右方になる。このように健康時と病気時は状況が逆になるので左右の矛盾もこれにより解決することができるが、臨床は広義の三焦として治療することを目的にするので体循環に准じた方向で取穴する。すなわち病状を理解するには逆方向理論によるが、臨床取穴は基本本来の左右で行なうことが本来の矛盾である。

この体還流と腹還流の還流方向が異なる理由を「自然界の潮流と季節風の如く陰陽・拮抗関係になることで、発汗や排泄等の自然生理現象を自発的に起なうことができる位置の力を有するねじれ(その形に有るだけで自然に動く位置の形状)」と理解した。つまり右回りに十二経脈を流注する胃気を含む経脈の流れと、左回りに臓腑間を流行する水の流れが陰陽・拮抗関係になって生命現象を自然に営んでいるのである。

そして生命維持の流れと地球還流の流れを合わせて考察すると、この二つの流れはどちらも陰陽の両気が化したものであるから病気も災害も同じ出来事ということになる。また原因も災害が「潮流と風向きにより発生する。」としたように、病気も「潮流に相当する腹部陰気と季節風に相当する体幹陽気の衝突の程度により出現する。」と同様の結論付けが出来る。

以上気象を例にして流れにより病気が発生することを述べた。次に腹鍼盤の応用例を述べる。

 

腹部85穴のうちの72穴は腹部経穴盤内の経穴である。この72穴は生命現象の要で開闔枢理論に沿い臓腑生理現象が直接投影される場所にある。よってこれらの腹部経穴の反応或いは経穴帯反射は生理的な現象か、病的な現象かを見極めることから先ず始めなければならない。その判断は開闔枢理論を基にしてその時々に行なっていく。

これらの腹部経穴群は縦横に正しく配置されている。

縦軸:任脈、鳩尾穴から曲骨穴まで、

横軸:臍を中心にして左右の肓兪穴から章門穴までの縦横の二軸を基本に作られている。

これを関数的に縦軸をY軸、横軸をX軸にすると臍は0になる。

 

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