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③ 東洋医学における『空論』について、『骨空論』解説

東洋医学における「空論」について

『内経』において「空」は主に二つの解釈で用いられている。一つは「空虚」一つは「骨空」である。

空虚は『疏五過論』で述べられているように通常の空、つまり「正気が誤治或いは外邪により虚した為に空虚になった場合」という解釈である。そしてもう一つの骨空は『骨空論』で詳しく述べられているが、ここで問題にしたのは「骨には空間はなく髄が詰まっているのに何故骨空という言葉を用いたのか」である。生体の組織を大別すると可燃性か不燃性かの二つの組織に分けられ、そして同様に生体における「モノ」の伝わり方も二つの方法に分けることができる。一つは通常の飲食の代謝で作られた可燃性の軟部組織による伝達で経絡伝道や水血の共鳴伝道である。そしてもう一つは生体に於ける唯一の不燃組織である「骨」に於ける伝達方式である。

骨はCaにより作られ焼却しても燃えることがないモノで生体に於いても明確にで現わされている。その形が一番明確な「骨 」(極陰)に於いて、一番不明確な「空」(極陽)の領域が投射されて影響をえているかを述べているのが『骨空論』「膝解爲骸關.侠膝之骨爲連骸.骸下爲輔.輔上爲膕.膕上爲關.頭横骨爲枕.」である。考えるにこの骨空伝道は胎児期に顕著な伝道方式である。胎児は脳が形成されていな時期なので自らの意思や学習により発達することはないが、どの胎児も同様に一つの生体の形に作られる。これは体内において骨により形が作られる段階で無意識の意思(空の投射)が骨に伝わり成長させているからであり、この方式は出世以後においても常に形を作る意思として存在する。

しかも伝道速度は波動を起こしながら伝達する通常伝道に比べてモノの媒体を一切必要としないこの骨空伝道の方が早いのにもかかわらず、常に通常伝道のサポートを行なっている。また『骨空論』はこの伝達方式だけではなく不燃焼時に於ける配穴にも言及している。つまり骨は不燃物である為に身体の不燃焼の残り火は必ず骨がつく穴(腕骨や京骨等)に反応が出現する。これらの骨穴は生体の不燃火に対処する経穴、或いは火に対する水を調整する経穴であるから(但し左右により働きは異なる)属する経脈の働きを充分に考えながら、各経穴を用いれば治療がスムーズに行なわれるのである。


『骨空論篇第六十』
「膝解爲骸關.侠膝之骨爲連骸.骸下爲輔.輔上爲膕.膕上爲關.頭横骨爲枕.」

『疏五過論篇第七十七』
「凡診者必知終始.有知餘緒.切脉問名.當合男女.離絶結.憂恐喜怒.五藏空虚.血氣離守.
工不能知.何術之語.嘗富大傷.斬筋絶脉.」

『小鍼解第三.』
「之動不離其空中者.知氣之虚實.用鍼之徐疾也.空中之機清淨以微者.鍼以得氣.密意守氣勿失也.」

『五癃津液別第三十六』
「水穀皆入于口.其味有五.各注其海.津液各走其道.五穀之精液.合而爲膏高者.内滲入于骨空.
補益腦髓.而下流于陰股.」

『天年第五十四』
「九十歳.腎氣焦.四藏經脉空虚.百歳.五藏皆虚.神氣皆去.形骸獨居.而終矣.」

『衞氣失常第五十九』
「骨之屬者.骨空之所以受益而益腦髓者也.」

『癰疽第八十一.』
「骨傷則髓消.不當骨空.不得泄寫.血枯空虚.」

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